National Trust

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Property プロパティ

vol.07


New Colection 2018 秋冬コレクションのテーマプロパティを訪ねて
英国有数の保養地 イングランド南西部を訪ねる

鮮やかなロドデンドロンの咲くトレングウェイントン・ガーデン。
 ©National Trust Images/Andrew Butler

英国の豊かな田園文化を感じさせる、ナチュラルなテイストが魅力のブランド「ナショナル・トラスト・コレクション」。その商品づくりは、英国の慈善団体、ナショナル・トラストが守り伝える庭園や邸宅、美しい自然から、インスピレーションを得ています。

英国で人気の観光地、イングランド南西部には、ナショナル・トラストの魅力的なプロパティがたくさんあります。温暖な土地に育まれた個性あふれる庭園「トレングウェイントン・ガーデン」、18世紀の女性たちの旅の思い出が詰まった「ア・ラ・ロンド」、そして、ミステリー作家アガサ・クリスティが休暇を過ごした「グリーンウェイ」。秋冬商品のデザインにインスピレーションを与える、3つのプロパティを訪ねます。


小川の庭に咲くカンデラブラ・プリムラ。
©National Trust Images/Andrew Butler

世界の珍しい植物がおおらかに茂る「トレングウェイントン・ガーデン」

温暖なコーンウォール州にあるトレングウェイントン・ガーデンは、資産家のプライス卿と、その後に地所を買い受けた実業家のブリソー家の人々によって、19世紀に形作られました。庭園を大きく変えたのは、20世紀前半にここに暮らした、サー・エドワード・ブリソー。彼は、州内随一と言われた有能な庭師を雇って、園内に小川を引いたり、マグノリアやロドデンドロンなど、世界各地からプラントハンターが持ち帰った珍しい植物を集めたりして、庭を充実させました。


造形の面白いツリー・ファーン。
©National Trust Images/Andrew Butler

ツリー・ファーンとツバキの珍しい組み合わせ。

©National Trust Images/David Sellman

園内には、オーストラリア原産の、ヤシの木みたいな大きなシダ、ツリー・ファーン(ディクソニア・アンタルティカ)の生える林もあります。ひんやりとしてほの暗い、異国情緒たっぷりのシダの庭。明るさをもたらす赤いツバキやピンクのロドデンドロンとの組み合わせが、印象的なシーンをつくります。


傾斜のついた花壇のあるキッチンガーデンも、見どころのひとつです。この地所を最初に整えたプライス卿はいささかエキセントリックな信仰を持った人物で、石塀で囲まれたこのキッチンガーデンを、ノアの方舟の大きさに合わせてつくったと言われます。約12万平米の広大な園内には、さまざまな楽しみが待っています。

葉色の異なるレタスをおしゃれに並べたキッチンガーデン。
©National Trust Images/Andrew Butler


18世紀女子旅の思い出が詰まった「ア・ラ・ロンド」

デボン州のエクスマスに、上から見ると16角形をした、可愛らしくもちょっと風変わりな家、ア・ラ・ロンドはあります。18世紀の終わりにこの家を建てて暮らしたのは、裕福なワイン商の娘だったジェーン・パーミンターと、その従妹で17歳年下のメアリー・パーミンター。彼らは、18世紀というまだまだ封建的な時代に、11年間にわたってヨーロッパ周遊の旅を続けた、じつに自由で自立した女性たちでした。

メドウの中に建つア・ラ・ロンド。
©National Trust Images/David Sellman


中央にある8角形の部屋は、
小部屋につながる8枚の扉にぐるりと囲まれています。
©National Trust Images/Andreas von Einsiedel

1796年、ヨーロッパ周遊の旅から戻ったジェーンとメアリーは、旅先で見つけた絵画やオブジェなど、たくさんの珍しい品々を納めようと、この家を建てました。16角形の家自体も、旅の思い出のひとつ。イタリア、ラヴェンナで訪れた、8角形をしたサン・ヴィターレ聖堂にインスピレーションを得て、建築家にこの家を設計してもらったのです。


ジェーンとメアリーは、フランスのシャモニーにある3000m級の山、モン・ビュエに、女性として初めて登ったとして知られています。2人はきっと、好奇心旺盛で先進的な女性だったに違いありません。少女を教育する学校や、未婚女性のための慈善院を設立して、地域の女性たちを助ける活動も行っていました。

女性らしい優しい雰囲気のダイニングルーム。
©National Trust Images/Andreas von Einsiedel


シェル・ギャラリーの装飾。
©National Trust Images/John Hammond

一方で、彼らは芸術的センスと手工芸に対する情熱も持ち合わせ、ア・ラ・ロンドの内装を何年にもわたって手掛けました。25,000枚の貝殻を用いたシェル・ギャラリーや、さまざまな鳥の羽根を用いた壁の飾り帯など、室内には2人の手による独創的な装飾が施されています。


ジェーンは1811年に、メアリーは1849年に亡くなり、家の隣に自ら建てた小さな教会に埋葬されました。メアリーは、地所の相続は血縁の未婚女性に限り、家とその中身をそのままの形で残すこと、という内容の遺言書を残し、それに基づき、その後何人もの未婚女性がこの家に暮らしました。

明るい緑の壁にひし形の窓が印象的な窓辺。
©National Trust Images/Geoffrey Frosh


アガサ・クリスティが愛した別荘「グリーンウェイ」

デボン州ダートマスの近くに、世界的に有名なミステリー作家、アガサ・クリスティが休暇を過ごした、グリーンウェイの屋敷があります。18世紀末に建てられたジョージア王朝様式の白い建物は、近くのトーキーの町で育ったアガサが幼い頃から知っていたもの。大人になり、作家として成功したアガサは、売りに出されていた屋敷に再会するなり、買わずにはいられないほど気に入ったのでした。

緑の中に建つグリーンウェイの屋敷。
©National Trust Images/Andrew Butler


アガサが家族や友人と過ごした客間。
©National Trust Images/Nick Guttridge

1950年代以降、アガサは新しい本を書き上げる度にグリーンウェイにやってきて、家族や友人と楽しい休暇を過ごしました。春、夏、そして、クリスマス。彼女は親しい人々とゆったりと過ごせるこのホリデーホームを「世界中でいちばん素敵なところ」と呼んでいました。


屋敷はイギリス海峡に注ぎ込むダート川を見下ろす丘に建ち、川沿いの美しい景色を見渡すことができます。1956年、アガサはグリーンウェイの屋敷や、川岸へと下っていく庭、ボートハウスを舞台に、名探偵ポワロ・シリーズの『死者のあやまち』を書き上げます。2013年、グリーンウェイでは実際に、英国のテレビドラマシリーズ『名探偵ポワロ』の撮影が行われ、小説の世界が再現されました。

屋敷から臨むダート川の絶景。
©National Trust Images/Andrew Butler


アガサの著書が並ぶライブラリー。
©National Trust Images/James Dobson

アガサの一家は蒐集好きで、屋敷には、アガサの著書をはじめとする書籍や、考古学者だった2番目の夫マックス・マローワンゆかりの品、銀器や陶磁器など、さまざまなコレクションが飾られています。衣裳部屋には、アガサや家族が身に着けたであろう衣服や小物も残されています。


1976年に亡くなるまでアガサが愛し続けたこの屋敷は、娘のロザリンド一家が暮らした後、2000年にナショナル・トラストの手に委ねられました。アガサが暮らしていた頃のままに残された屋敷は、ミステリーファンのみならず多くの人を楽しませてくれます。

コレクションのひとつ、ベルギーレースのショール。
©National Trust / Christopher Woodman



/Masami Hagio /

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